アルマイト(陽極酸化処理)の原理と種類
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本ページの規制に関する記述は概要です。実際の対応は、法令原文、所管の行政機関、専門事業者の確認が必要です。皮膜の厚さや処理条件などの具体的な数値は、規格や顧客の仕様書によって異なるため記載していません。
アルマイトは、アルミニウムの陽極酸化処理を指す名称として広く使われています。アルミニウムの部品を陽極にして、硫酸やしゅう酸などの電解液の中で電流を流すと、素材の表面が酸化し、アルミニウム自身から酸化皮膜が成長します。めっきが別の金属を表面に付け足す処理であるのに対し、陽極酸化は素材の表面を酸化物に変える処理である点が基本的な違いです。
陽極酸化皮膜は、微細な孔が多数ある多孔質の構造を持ちます。この孔を利用して、染料で着色したり、金属塩を電解で析出させて着色したりできます。着色後に孔を塞ぐ処理が封孔処理で、耐食性を高めるために行われます。皮膜の主な種類を整理すると、次のようになります。
- 普通アルマイト:硫酸浴などで処理する一般的なもので、建材、日用品、電子機器の筐体などに使われます。
- 硬質アルマイト:低温で処理するなどして、より硬く厚い皮膜をつくるもので、摺動部品や機械部品など耐摩耗性が必要な用途に使われます。
- 着色アルマイト:染色や電解着色で色を付けるもので、意匠性が重視される製品に使われます。
国内のアルミニウム産業の情報は、一般社団法人日本アルミニウム協会の公式サイトで確認できます。技能の面では、厚生労働省の職業能力評価の資料に、技能検定の「アルミニウム陽極酸化処理」(1級・2級)が関連資格として記載されています。また、職業情報提供サイト(job tag)では、めっき工の職業別名の例としてアルマイト工が挙がっており、陽極酸化の仕事がめっき工の職業分類に含まれていることが分かります。
受託加工の現場での位置づけ
アルマイトを専門にする事業者のほか、めっき加工業者が陽極酸化を併設している例もあります。日本プレーテックの公式サイトの業務内容には、アルミニウムとマグネシウム合金の化成皮膜処理に加え、マグネシウム合金の陽極酸化皮膜処理が掲載されています。三ツ矢の公式サイトには、めっき種とあわせてアルミ化成処理が挙げられています。いずれも、めっきとアルミ・マグネシウム素材の表面処理が同じ事業者の中で提供される例といえます。
化成処理:防錆と塗装の下地をつくる
化成処理は、金属の表面を薬品と反応させ、素材の表面に薄い無機の皮膜をつくる処理です。亜鉛めっきや鋼板の上に防錆皮膜をつくるクロメート処理、鋼板や亜鉛めっき鋼板の塗装前の下地をつくるリン酸塩処理、アルミニウムの塗装前処理などが代表的です。いずれも、素材そのものの耐食性を高めたり、上塗りの塗装の密着性を高めたりする役割を担います。
日本パーカライジングは、公式サイトの会社概要で、薬品事業を化成処理薬剤、圧延油、防錆油、無電解めっき液などの開発・製造・販売と説明し、装置事業では前処理・電着塗装装置、排水処理設備、粉体塗装装置を製造・販売していると示しています。自動車の車体や部品の塗装工程の前処理は、化成処理の大きな需要先のひとつです。化成処理は、めっきと異なり、金属の厚い皮膜をつくるものではないため、膜厚の測定よりも皮膜量や外観、耐食性試験で品質を確認するのが一般的です。
亜鉛めっきの上に施すクロメート皮膜は、従来、六価クロムを含む処理液が広く使われてきました。優れた耐食性と自己修復性が評価されていた一方、六価クロムの有害性と規制により、代替技術への転換が進められてきました。次の節で、その経緯を整理します。
六価クロムをめぐる規制の整理
六価クロムは、クロムの化合物のうち、酸化数が6のものを指します。クロム酸や重クロム酸塩に代表され、めっきや化成処理の薬品として長く使われてきましたが、人の健康や環境への影響が指摘され、複数の法令・規制で扱われています。以下では、それぞれの規制の「概要」を一次情報の範囲で整理します。
製品に含まれる物質の規制:RoHS指令とELV指令
中小企業基盤整備機構が運営する情報サイトJ-Net21の解説によると、EUのELV指令(2000/53/EC、廃自動車指令)は、自動車に関するリサイクル要求と特定有害物質の含有制限を定めており、有害物質規制の対象は鉛、水銀、カドミウム、六価クロムの4物質群です。最大許容濃度は、均質材料の重量比で、カドミウムが0.01wt%、そのほかの鉛、水銀、六価クロムが0.1wt%で、電気・電子業界と自動車業界の最大許容濃度は同じと説明されています。RoHS指令も、電気・電子機器について六価クロムを含む特定の物質の使用を制限しています。適用除外の項目や期限は改正で変わるため、最新の内容は、指令の原文や、J-Net21の解説ページで確認してください。
部品メーカーや加工業者にとって、これらの指令は、取引先から提示される含有化学物質の管理要求を通じて影響します。亜鉛めっき部品のクロメート処理を、六価クロムを含まない処理に切り替えるよう求められることが、三価クロム化の主な動機のひとつです。
作業者の健康:労働安全衛生法と特定化学物質障害予防規則
労働安全衛生法の関係では、特定化学物質障害予防規則(特化則)が、特定化学物質を取り扱う作業について、作業環境測定、健康診断、局所排気装置や保護具といった措置を定めています。e-Govの法令データに掲載された特化則の条文には、「クロム酸等」(クロム酸及びその塩、重クロム酸及びその塩)を製造する作業場などの作業環境測定の記録を30年間保存することが定められています。どの作業にどの規定が適用されるかは、取り扱う物質と作業の内容によって異なるため、特定化学物質障害予防規則の条文と所轄の労働基準監督署の案内でご確認ください。
排水:水質汚濁防止法
環境省が公表する一般排水基準では、六価クロム化合物の許容限度は0.2mg Cr(VI)/Lです。また、生活環境項目として、クロム含有量が2mg/Lと定められています。めっき工場や化成処理の工場は、六価クロムを含む排水を還元処理して三価クロムとし、水酸化物として沈殿させて除去するのが一般的な処理の考え方です。排水規制の詳細は排水処理規制・資格・キャリアで整理しています。
化学物質管理:PRTR制度
PRTR制度は、化学物質排出把握管理促進法に基づき、対象の化学物質の環境への排出量と移動量を事業者が届け出る制度です。令和3年10月20日に政令が公布され、令和5年4月1日に施行された改正により、第一種指定化学物質は462物質から515物質へ、第二種指定化学物質は100物質から134物質へ見直されました(兵庫県の解説ページによる)。対象となる物質や事業者の要件は、経済産業省の公表資料でご確認ください。
三価クロムへの転換
三価クロムは、六価クロムに比べて有害性が低いとされるクロムの形態で、これを使った化成皮膜が、六価クロムを使うクロメート皮膜の代替として開発されてきました。日本表面化学の社長挨拶は、同社が亜鉛めっき関連の処理剤に強みを持ち、従来のクロメート処理剤に代わる三価クロム化成皮膜剤を「トライナーシリーズ」として展開していると述べています。同社の公式サイトでは、研究開発の成果として三価クロム化成皮膜剤を掲げています。
転換にあたって論点になるのは、次のような項目です。
- 耐食性の確保:六価クロム皮膜と同等の耐食性を得るために、トップコート(上塗り)の併用や、多層の皮膜構成を取る例があります。
- 外観と色調:皮膜の色調(透明、黒色など)が従来と異なる場合があり、顧客の外観基準との調整が必要です。
- 液管理:三価クロムの処理液は、金属イオン濃度やpHの管理が品質に影響するため、液の分析と補給が重要です。
- 顧客の承認:自動車部品などでは、切り替えにあたって顧客の評価と承認が必要になり、時間を要します。
- 排水処理:三価クロムは六価クロムの還元工程を必要としませんが、クロム含有量の排水基準や、ほかの金属成分への対応は引き続き必要です。
三ツ矢の公式サイトは、めっき種とともに銅材クロメート処理を、日本プレーテックの公式サイトは3価クロメート処理を、それぞれ掲載しています。処理を選択する際は、加工業者に、現在対応している処理の種類と、顧客が求める含有化学物質の基準への適合状況を確認することが実務の基本です。薬品メーカー各社の事実項目は【比較表】めっき薬品・表面処理薬品メーカーをご覧ください。
硬質クロムめっきは、機能面で優れた特性を持つ反面、六価クロムの浴を使うことが一般的で、環境・労働安全面の負担が大きい処理です。代替めっきや別の皮膜技術の検討が進められていますが、現時点で全面的に置き換えられる標準があるわけではなく、用途ごとの個別検討が続いています。ブログでは、三価クロムへの転換を巡る論点を別の記事で取り上げています。
陽極酸化・化成処理の品質確認と加工業者への確認事項
陽極酸化皮膜や化成皮膜は、めっきと同様に、仕様書で評価項目と合否基準を取り決めて発注するのが基本です。陽極酸化では、皮膜の厚さ、外観と色調のばらつき、硬さ、封孔の状態、耐食性試験の結果が主な確認項目になります。色調は素材のアルミニウム合金の種類や前処理の状態にも左右されるため、同じ条件でも素材のロットが変わると見え方が変わることがあります。意匠性が重視される部品では、限度見本を取り交わしておく運用が一般的です。
化成処理では、皮膜量、外観、塗装後の密着性、耐食性試験の結果が確認項目です。塗装の下地として使う場合は、化成処理だけでなく塗装工程全体の評価が必要になります。三価クロム化成皮膜への切り替えでは、従来品との外観の差、耐食性試験の結果、顧客が定める含有化学物質の基準への適合を、試作と評価で確認する流れになります。
加工業者に確認しておきたい事項は、対応できる素材と合金の種類、処理槽の大きさ、治具の設計への対応、ISO9001などの品質マネジメントの認証、排水処理の体制、含有化学物質に関する情報提供の可否です。複数の加工業者に同じ図面と仕様で見積もりを依頼し、回答の内容と根拠資料を並べて確認すると、仕様の前提を揃えた比較ができます。
一次情報の確認先
- 中小企業基盤整備機構 J-Net21:RoHS指令の基礎(ELV指令の有害物質規制)
- e-Gov法令検索:特定化学物質障害予防規則
- 環境省:一般排水基準
- 兵庫県:化学物質排出把握管理促進法の政令改正(令和3年10月20日公布)
- 一般社団法人日本アルミニウム協会:公式サイト
- 日本表面化学:会社情報(ご挨拶)
- 日本パーカライジング:会社概要
